「マダニ感染症、猫から感染 女性死亡 「ネコからヒト」初確認」 (日本経済新聞、2017年7月24日 18:11)
厚生労働省は24日、野良猫にかまれた50代の女性がマダニが媒介する感染症「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」を発症し、10日後に死亡していたと発表した。かまれたことが原因とみられ、猫からヒトへの感染事例が明らかになるのは初めて。
ノラ猫に噛まれて死亡した、というセンセーショナルなニュースである。ちょっと調べてみたのでメモ代わりに書いてみる。
噛み傷のリスクと治療については、次のスライドがまとまっている。
「動物咬傷」松山赤十字病院 皮膚科 緋田 哲也(PDFファイルによるスライド)
飼っているペットに噛まれた場合には、患部の洗浄を行い、口腔内の嫌気性菌による感染を治療するためペニシリン系の薬剤を投与することが多い。
しかし今回の事例は、ダニによって媒介される感染症SFTSが原因である。
屋外飼育されていたり野生状態である哺乳動物に噛まれた場合は、動物が未知の感染症を持っている可能性があり、リスクが大きくなるだろう。
SFTSは2011年に中国の研究者らによって発表されたブニヤウイルス科フレボウイルス属に分類される新しいウイルスによるダニ媒介性感染症である。2013年1月に国内で海外渡航歴のない方がSFTSに罹患していたことが初めて報告され、それ以降他にもSFTS患者が確認されるようになった。(略)感染経路はマダニ(フタトゲチマダニなど)を介したものが中心だが、血液等の患者体液との接触により人から人への感染も報告されている。治療は対症的な方法しかなく、有効な薬剤やワクチンはない。(国立感染症研究所)
農作業中に感染するなどの症例がある。なおかつ 患者体液から医療者への感染リスクもあり、病理解剖や葬儀のときの遺体の扱いなどにも留意がなされている 。
ダニ媒介性感染症など、いわゆる「風土病」「地方病」については、市街地や都市部とは異なる注意が必要であろう。
ちなみにヒト咬傷、つまり人間に噛まれた場合の感染症もバカにならない。
ヒトによる咬傷で最も頻度の高い原因は,口を殴った結果,歯による中手指節関節への損傷(手拳損傷[clenched fist injury])である。ヒトの口腔菌叢には,Eikenella corrodens,ブドウ球菌,レンサ球菌,および嫌気性菌が含まれる。手拳損傷の患者は,創傷が生じてから受診するまでに何時間または何日も待つ傾向があり,それにより感染症の重症度が増す。(MSDマニュアル)
素手でぶん殴ったあとに傷跡が化膿してひどいことになる、というパターンである。人を殴らないようにするべきであろう。
Originally published at https://note.com on July 14, 2019.